いまさらメーリングリストの開発? —— 2026年の「届かない」を突破する


最近、とあるクライアント(地域団体)から、「長年利用してきたメーリングリストサービスで、特定のアドレス宛にメールが全く届かなくなった」という相談を受けた。

SlackやLINEなどのチャットツールが普及した今でも、公的な組織における事務連絡や資料配布において、メールは依然として「到達が保証されるべき」重要なインフラだ。 しかし、昨今のスパム対策の激化により、一斉メールを「確実に届ける」というタスクは、かつてないほど難易度の高いものになっている。

1. 「ただ送るだけ」では届かない時代の壁

2026年現在、古いメーリングリストサービスや安価なレンタルサーバーの標準SMTPから送信されるメールは、多くの受信サーバーで「不審な通信」と判定されやすい。

  • 送信ドメイン認証の必須化: SPF、DKIM、そしてDMARC。 これら三種の神器が完璧に揃い、かつ整合性が取れていなければ、GmailやOutlookなどの主要プロバイダーには相手にすらされない。
  • レピュテーション(信頼スコア)の重要性: 共有IPサーバーでは、同じIPを使っている他者の影響で自分のメールまでブロックされるリスクがある。

2. 刷新したアーキテクチャ:Amazon SESへの移行

今回は、既存のレガシーな環境を捨て、AWS(Amazon Web Services)を基盤とした現代的な配信システムへマイグレーションを行った。

  • 配信エンジンに Amazon SES を採用: 到達率を最大化するため、AWSの強固な配信インフラを活用。 厳格な審査(Sandbox解除)を経て、正当なトランザクションメールとしてのルートを確立した。
  • サブドメインによる受信・配信の分離: サーバー上に構築したサブドメインを「受信の入り口」とし、PHPスクリプトで解析後にSESへリレーする。 これにより、既存のメール運用に一切影響を与えず、配信能力だけを劇的に強化した。
  • インテリジェントなスロットリングと不達管理: 一斉送信時に受信側サーバーを驚かせないよう、数秒〜数分単位で「小出し」にするスロットリングを実装。 同時に、バウンス(不達)が発生した際のアドレスをDBに記録し、リストを動的にクリーンアップする機能を備えた。

3. 「枯れた技術」の近代化

一見すると古くさい「メーリングリスト」という課題も、その裏側には複雑化したWEBのセキュリティ仕様や、インフラの最適化といった現代的なテーマが詰まっている。

古いサービスでは対応できなくなった課題を、最新のクラウドサービスとカスタムスクリプトで解きほぐす。こうした「目立たないが重要なインフラの近代化」を陰で進める。